望む状況を求めるなら
ある会社の例え話しです。
役員会で、最近空気が乾燥していて、あちらこちらで火事が多発しているので「火の用心」をする、ということが決まりました。
それぞれの役員は、担当部署に戻り、部長たちを集めて役員会で決まった「火の用心」を徹底するように指示をしました。
部長たちはさっそく、担当の課長たちを集めて同じように、「火の用心」の徹底を指示しました。
課長たちも部下を集めて、「火の用心」をするように話しをしたところ、あるパート社員から質問が出ました。
「火の用心」が大切なのは分かりましたが、私は何をすればいいのでしょうか。
役員会で決まったのは、「だったらいい」とか「ならないといい」という願望で、それを実現するために各部署や部門、現場は具体的に何をしたらいいのかの方策は決められなかったし、具体策を検討して実施するように指示もされていなかったのですね。
「火の用心」、火事にならないための防火活動や日頃の点検方法、チェックすべきポイント、万が一火災になった場合の場所ごとの消火活動や避難の方法など、現場レベルはもちろん、フロア別、建物別、出火原因別、会社全体として、など「火の用心」で決めなければならないことはたくさんあります。
火事になると、失うものが大変に大きくなるので「火の用心」は大切ですが、「火事をおこすな」という号令だけでは対策にはならないし、作業や動作の都度の防火意識や心がけはもちろん、火事になった場合の消火活動体制、人命救助方法など、事前の取り決めや訓練も怠ってはいけません。
次は、社員同士の親睦を図るために「運動会」をやろうと役員会で決まりました。
実現のためには、決めなければならないことがたくさんあります。
社員ができるだけ多く出席できる日はいつか、時間は何時から何時までか、場所はどこで、予約はできるのか、いくらかかるのか、現地の会場設営と後片付けは、どのような種目の企画とするか、必要な道具・用具な何か、誰が用意するか、賞品は、弁当は、社員だけが参加できるのか、などなどですが、ここで忘れがちなのは、当日のお天気の心配です。
必ず晴れて、実施できるとは限らないわけですから、雨が降ったらどうするか、いつまでに実施・中止の決定を誰がするか、その連絡体制は、中止なのか延期なのか、などなどあらかじめ決めておかなければいけないことが山積みなのに、そんなことに手を出さない役員たちが、「運動会」の開催効果だけを望んで決めてしまいます。
さらには、「明日天気になれ」と願います。
経営であれば、いいお天気を望むのであれば、どうしたらいいお天気になるのか、天気が悪い場合はどうするか、までも対策を講じていなければなりません。
実行する現場への指示
現実的には、これほどお粗末な会社はないとは思いますが、ここでは事故やイベントを例えに「火の用心経営」「晴れが前提の運動会計画」「明日天気になれ経営」として象徴的に現場が困る会社などの上層部の決定を上げてみました。
こんな様子は、事故防止やイベントだけでなく通常の仕事の進め方にでも、もしかしたらみられるかも知れません。
さらに、同じような状況は、会社以外でも町内会やサークルなどでのイベントの企画でもあり得るでしょう。
目指す目標が設定されたら、完成予想図だけを眺めているのではなく、実現までの無理なく、期限に間に合うようなプロセスを誰が、何を、いつまでに、いくらを使えるのか、など具体的に取り決めなければなりません。
上層部が決定した対策、目標、企画などの内容と、それを実行するための方策が、実際に作業をする現場にまで浸透し、それを実行する現場の状況を上層部が理解をしていないと、決定した対策、目標、企画などは望む結果が得にくいものです。
いわゆる、風通しがいいといわれる意思疎通のよさに加えて、お互いを思いやる相互理解がある組織は、効率よく、確実にたくさんの実績を残すことができ、どんな逆境にも負けることなく生き延びることができるでしょう。
そして、事故がなく安全に、現場が納得しつつ、楽しんで実行でき、チームワークが醸成されて、達成感を感じることができたらいいですね。
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