ミミズのからだ
ミミズ、ご存知ですよね。土のなかにいて細長く、クネクネ、ニュロニョロと動き、見た目や動きからあまり好きだという人は多くはなくて、苦手な人も多いミミズですが、そのミミズに手や足がないことは見て分かりますが、脳もなく、その姿のままおよそ4億年まえの古代から形を変えずに生きてきたそうです。
脳がなくても生きていけるのは、腸などの消化管が脳の機能を持っているからだと言われていて、同じようにクラゲやイソギンチャクなども脳を持っていないそうです。
ミミズが属する環形動物は、体は環状の柔らかい体節に分かれていて、体節ごとに「はしご状神経系」という神経節があり、その最前部の大きな神経節が脳のような働きをしていて、同様な構造は昆虫でも見られるそうです。
ミミズの体の前方部には脳、心臓、受精嚢や貯精嚢など生命維持や生殖に必要な器官があって、後方部には腸が長く伸びているだけなので、そのため、万が一捕食者に襲われた時などは後端部を自切しても生命や生殖に対する影響は少なく、自切することにより捕食者から逃げ、自分の命を守ることができ、切れた後端部がしばらく動くことは、捕食者の注意を引きつけその間に逃げるという、自分の命を守るもう1つの手段だと考えられています。
ミミズは脳を捨てた
ミミズには脳がないからどこで切られても生きていけるし、腸で考えるから生きていく方法以外のどうでもいいことに悩んだり、迷ったりするというわずらわしさはないので、ミミズはそのために脳を捨てたのかも知れませんね。
ミミズも昔は、脳や目を身に付けたこともあると言われていますが、生きるということに特化するためにそれらをわざわざ捨てたとすれば、ミミズこそ最小限で最先端の性能を持つ、最も洗練された生物だと言えるかも知れませんね。
ミミズの生き方
ヒトなど生物に最初に備わった器官は、脳や心臓ではなく腸だと考えられています。
ミミズは暗い地中で黙々と土や枯れ葉などを食べ、腸で消化してそれをフンとして出しますが、ミミズの腸内には数えきれないほどの優れた腸内細菌が棲んでいて、土壌のさまざまな有害物質を処理し、有益なものに変えてくれています。
そのことからかつてアリストテレスは、ミミズのことを「大地の腸」と称したと言われていて、やせた土地を肥えた土地に変え、地球の自然を守り、生命循環の基となる土を生き生きと豊かにさせている功労者はミミズの腸ということになります。
ミミズは、土の中で暮らす動物のうち総重量では全体の50~80%を占めているとされ、日本国内では1平方メートルの土地に1200匹以上いたという報告もあるそうで、ミミズは毎日体重の3分の1以上を食べて排出するので、もし1200匹のミミズがいたとすると、1年に処理している土は1平方メートルあたりおよそ15キロにもなり、また、死ぬ間際までミミズの研究をしていたとされる生物学者のダーウィンによると、5万匹のミミズが1年間に排泄するフンの総量は18トンもあったとのことです。
土の中に含まれている微生物は、普段ほとんどが休眠した状態なのですが、ミミズが土と一緒に微生物を食べて体内に取り込むと、適度な水分や温度が与えられて活発に活動するようになり、フンとともに出てきた微生物たちは落ち葉や土の分解を早めて良い土へと変えていき、またミミズが動き回ることで土が柔らかくなり、さらに排出したフンが地表を覆うことで、遺跡や遺物を徐々に土に埋め、風化を免れさせることによって古代の遺跡を守るのに重要な役割を果たした、ともいわれています。
ミミズは種類も多く、世界にはおよそ6000種類が知られていますが、毎年新種が100種類ほど追加されているそうです。
ミミズが土壌を豊かにしてくれるので農業には欠かせない存在ですが、ミミズが動いてできたトンネルは排水路となったり、イトミミズの活用で水田の雑草が生えるのを抑えることができて、農作業の大幅な軽減につながるなどの効果に加えて医療分野でも、ミミズの体内から血栓を分解する能力のある酵素が見つかったりするなど、さまざまな分野で地球や人類へのミミズの果たしている役割が知られてきましたが、さらに、なんと土の中を自在に動くミミズを模したロボットをこれからの月や火星などの「宇宙探査」で大活躍させよう、という研究まで進んでいるそうです。
ミミズは生きていく環境を、気温や天候など比較的変化の少ない土の中として、食料には容易に、大量に摂取できる地中の微生物を選び、生きていくことだけに特化してきたために余計なことを考える脳を捨てたことで、長いあいだ進化もしないでその姿を変えることもなく、安全に生き延びてきたのですが、そのおかげで私たちや地球の役に立っているわけですから、見た目だけから嫌ってはバチが当たるかも知れませんね。
地球上にはミミズのような生き方をする生物がいて、生きること以外の余計なことは考えずに、安全にそれなりに生きているということを知って、もちろんヒトは脳を捨てることなどはできませんが、なにか生きるヒントを得たような気がします。
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