「シンパシー」の語源
前回は、「ラポール」が「心が通い合う関係」という話題でしたが、親しい関係にはほかに「シンパシー(同情)」を通じたつながりがあります。
相手の考え方や立場、振る舞いに対して「シンパシーを感じる」「シンパシーを持つ」などという言い方をしますね。
「シンパシー」は、英語の「sympathy」に由来し、同情や共感、共鳴という意味で、相手のつらさに同調したり、何らかの感情を共有したり、相手の意見や言葉に共鳴したりすることを意味する言葉です。
元々は、ギリシャ語の「syn(=一緒)」と「pathos(=苦しむ)」を組み合わせた言葉で、文字通り一緒に苦しむ、仲間のように共に感じる、という意味が語源になっています。
「シンパシー」「心配し」と考えれば覚えやすいですね。
気持ちの共有
「シンパシー」は、他人と気持ちを共有する「自然な感情の動き」を表す言葉です。
私達は、友人・知人や部下などかかわりの深い相手と話しをしている時だけでなく、まったく関係のない人の生き方や考え方を本で読んだり、テレビなどで話しを聞いた時でさえも、相手の状況や立場を理解して、自分との共通項を見出し、共感することがあります。そのように相手の気持ちに共鳴した場合に「シンパシーを感じる」といいます。
例えば、相手が仕事で失敗して落ち込んでいる話しをしてきた時に、相手がそうなる状況や立場が自分の過去の経験などと重なって、「なんとなく自分までつらい気持ちになってきた」という場合や、相手が苦境に立たされている時に、それらに立ち向かう姿に共感して「がんばれ」と応援する気持ちになる時に「シンパシーを感じる」といいます。
誰かがつらい思いをしている時に、周りの人、職場であれば同僚が「シンパシー」の気持ちを表し、それによって相手の気持ちを大切にしているという態度を示すことで、安心して話しを聞いてもらえるオープンなコミュニケーションの人間関係が生まれます。
「シンパシー」という同情の感情を持つということは、相手への思いやりを示すことなので、お互いの関係に良い影響をもたらすと同時に、相手の状況を理解するということで自分の心の整理にもつながります。
ただ、相手の状況や感情などについて、すぐに結論を出してしまうことが相手への本当の理解につながらない場合もありますので、話しを聞く時には思いやりの気持ちを持つことは大切ですが、その気持ちが前のめり的になると、誤った同情になるかも知れず、結果として相手のためにならなくなることもあり得ますので、慎重さも大切です。
また、相手の苦しい立場の話しを聞くときに、それに距離を置くような第三者的な態度や、そうなった原因を責めたり、対応を指導するような振る舞いは絶対に避けなければいけません。信頼関係が失われてしまうからです。
「テレパシー」
「シンパシー」と同じように「パシー」の付く言葉に「テレパシー」がありますね。
「テレ(tele)」は、「遠くへ」を意味する接頭語ですから、距離がある状態で自分や相手の精神的な感情や考えが伝わることで、遠感現象や精神感応と言われていますが、これをマジックのように自由に操れると、いわば超能力のようなものになります。
「テレパシー」には、「シンパシー」のような同情や共感の気持ちはなく、偶然に同じものが食べたい、とか同じ所へ行きたい、とか同じことをしたい、とか「以心伝心」に近いものと理解されています。
このように、日常生活などで、偶然に相手と同じことを考えていた時などに「テレパシー」という言葉を使います。
立場や状況が異なる相手に、自分の考えや思い、置かれている状況を正しく伝えること、またその逆に、相手の事情を正確に理解することは大切なことですが、その前提は、お互いの信頼関係が築かれていて、お互いの思考パターンや日頃の生活パターンに理解があることです。
あまり親しくない人と突然に、込み入った話題になってもお互いに、どのように対処していいかが分からず、戸惑いが生まれるだけです。
「シンパシー(同情)」を感じ合う話しの相手は、特別な関係の人ということで、限定的になりますね。
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