第76話 居場所

考え方が変われば生き方も変わります
悩むことで心を傷つけるより、頭を使って考え、違う生き方を試してみませんか

「居場所」が欲しい

「居場所」については、住んでいる行政の区内や地元で行われている「まちづくり」、「地域づくり」、「支え合い」、「ふれ合い」などの地域活動に参加すると、必ずといっていいほどテーマに上がる大きな課題の一つです。

どこの地域活動でも「居場所作り」が課題になりますが、「居場所」というのは自分の生活のなかで見つけるものではなくて、ほかの人から用意される場合もあるのですね。

定年退職した男性が、時間があるので地域活動でもしようと思っても誰が、どこで、どんな活動をしているか分からないし、どこに連絡をしていいのかも分からず、かといって家にいては邪魔者扱いされるのでどこか「居場所」が欲しい、とか子育て中で近所に知り合いがなく、同じ境遇の人たちと情報交換したいがどこに連絡していいかが分からないのでどこか集まれる「居場所」があるといい、などというのは理解も想像もできるのですが、最近問題になっているのはそういうケースだけでなく、自宅から学校や会社に通っていても家庭や学校、職場に自分の「居場所」がないと感じている人が多いので、解決すべきテーマになっているのです。

ということは、「居場所」というのは、物理的な、比較的長い時間滞在して過ごすことができる場所というだけでは「居場所」としての条件を満たしていないようで、それに加えて、心の安らぐ場所とか精神的な要素が必要な要件になっているのでしょうね。

つまり、「居場所」というのは、物理的に比較的長い時間「居」られる場所というのではなく、気の合う、心が通い合う人が「居」る場所ということで、精神的な要素が満たされる場所ということなのでしょう。

「居場所」を作る

もちろん、日常の生活や日々の活動のなかで、家庭、学校、職場、地域のそれぞれで、またはどこかで、充分にとはいかないまでも、心を安らげたり、気分転換ができる状況をつくることができる自分なりの「居場所」を感じている人も多くいるとは思いますが、いまの環境のなかで「居場所」として感じられる場所を探せない人に向けて「居場所」になれるような場所を用意しようという動きもあるのです。

ただ、「居場所」を求めている人には当然にさまざまな要望があり、さらにその形態や運営にはいろいろなパターンが考えられ、個人や地域性など状況や物理的な場所などの条件に合わせて、効果があり、実現可能なものを作り上げていくというのは容易なことではありません。

誰にでも効果がある万能の「居場所」を作ったり、または要望ごとの「居場所」を作るというのは不可能なので、地域や地元に「居場所」を一つ作るのであれば、その特性が強く出ている状況を把握し、その課題解決のための地元の理解と合意、さらに行政ではなく、全体をまとめてくれる地元住民のリーダーや協力してくれるボランティアの存在が不可欠です。

「居場所」とは

そもそもなぜ、日々の暮らしのなかで「居場所」がないと感じたり、どのような「居場所」があったらいいと感じているのでしょう。

多くの人が「居場所」だと感じる状況は、心を許し合える家族や友人がいて、もちろんSNSなどではなく実際に会ってコミュニケーションがとれ、できればスキンシップなどの行動ができればなおよく、拘束されるものがなく、giveだけでも、takeだけでもないバランスがとれた人間関係、自主的に、主体的に活動ができて、ある程度頼りにしてもらえて、存在感が味わえる、そんな要件がある程度満たされている必要があるでしょう。

また、職場などでの「居場所」と感じるための要件としては、やりがいや達成感、自己実現などを感じることが加わるかも知れませんね。

同じ趣味を持つ人たちとの交流の場所も「居場所」としては適しているとは思いますが、出かけていく時間やお金がかかるケースもあり、技術的な上手い、下手などの関係性も負担になったり、組織性に拘束感があったりなどで長続きすることが難しいし、第一に、これまで趣味などというものを持ってこずに過ごしてきた、という人もいて、少しハードルが高く感じることもあるようですが、地域活動であれば地元という気楽さもあって参加しやすいことから、「居場所」としてコミュニティ、地域活動ができる場所や機会がひとつの解決策として挙げられているのです。

「第32話 山を見て育つ、海を見て育つ」でも話しをしましたが、やはり同じ生活環境で暮らしていると、比較的お互いを理解しやすく、活動する内容も地元という関係性のなかで具体的になりやすいことから、家庭や学校、職場などとは違った状況となると、地元や同じ地域の方たちであれば親近感もあって、比較的ハードルも下がり、憩いの場や地域交流の場としての「居場所」は作りやすのではないかと考えられます。

地域に長く住んでいる女性は、定年などという大きな人生の転機がないことから、家庭以外にこれまでに培ってきたお付き合いを通じていくつかのコミュニティや「居場所」に参加している様子が見受けられますので、突然に「居場所」を必要だと感じているのはやはり、定年などで生活環境が大きく変化した男性や、やはり出産・子育てという大きな生活環境の変化を迎えた子育て中の女性に多いようですね。

一方、家庭に「居場所」を感じられない子どもの環境は、親が子どもに勉強やしつけを押しつけたり、兄弟・友人と比べたり、夫婦や兄弟の仲が悪いなどのほか、虐待やネグレクトなどが原因で、家庭が心が落ち着く場所ではないためといわれています。

また職場で「居場所」を感じられない原因は、職場での存在意義が見いだせない、職場での仕事の内容や自分の役割、望む人間関係が実感できない、理解できない、職場内での情報が共有されない、親しく話せる相手がいないなどの状況からの疎外感が大きな要因といわれています。

「居場所」はきっかけ

やはり「居場所」というのは、「イ~ばしょ」として、そこに自分の身を置きたい状況で、話し相手がいて、お互いが信頼し合っていて、余計な気を遣わなくて済むということが、はずせない条件なのですね。

自分が「居場所」と感じる場所に集まっている人たちは、同じようにそこを「居場所」と感じているわけですから、自分がほかの方たちに受け入れてもらえるように「和」を乱すことがないように努める必要があり、また、ほかの人を受け入れる寛容さもなくてはならないでしょう。

文字どおり、「居て」「居心地がいい」と感じることができる「居場所」はおそらく多くの人も同じように感じることができる場所なので、そこで交流の機会を得て、ほかの場所での活動にも結び付けられやすいことが考えられるので、それをきっかけにして「居心地がいい」場所から、やりがいや生きがいを見出せるような行動を起こせると、「居場所」本来の役割を果たせたことになります。

「居場所」に多くの人が集まると、その可能性も広がっていきます。

「居場所」はきっかけの場所で、ほっとして終わりという最終的な場所ではありません。

心を通わせることができる人たちとの交流を通じて、心を安らげたり、気分転換を図ったり、協力し合ったりして次のステップへの行動を起こすための「きっかけの場所」です。

自分自身の、これから生きていこうとする本来の前向きな、心地いいコンデションに気持ちを整える場所です。

自分の成長や他人(ひと)のためなどの生きがいややりがいを感じることができる行動を起こしたり、気分転換を図るなどの次の行動に結びつけることにつながる「きっかけとなる場所」、それが「居場所」です。

日常生活のなかで、家庭や学校、職場などで一緒に過ごす家族や友人、同僚たちとの関係で「居場所」を感じることができればいいですね。

羽澤 幸成

学生時代の県人会幹事長として、のちに大活躍される国会、県会、市会の議員の方や役所の方、趣味の音楽活動を通じて芸能の世界で生きている方など多くの人たちに接し、社会人になってから海外進出など多くのプロジェクトを軌道に乗せ、その分野の専門の方たちとも知り合い、いくつかの新しいことにもチャレンジして、早期退職後の企業信用調査の仕事では、それまでの大きな会社の人たちとは違う中小企業や個人事業の方たちとお会いし、いまは地域コミュニティ活動を通じて地域の方たちと交流活動をしています。
それらのキャリアを通じて、たくさんの経験をし、外国の方も含め多くの人たちに出会い、楽しいことばかりでなく、いやな思いもたびたびして、いろいろなことを学びました。
それぞれの世界で、多くの人たちが作る人間模様のなかで、うまくいっている人やそうでない人もいて、能力以外に考え方が違うのだ、と感じました。
人それぞれ考え方が違うので、当然に生き方も異なり、一緒に仕事や生活をしながら、なぜ、そうするのかを考えることの繰り返しで対応しながらも、自分の信念は曲げずに生きてきたので、心を痛めて悩んでいる人に、こうは考えられないかな、と頭を使って苦境を打開するキッカケになってくれればと思っています。

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